「登録社員としてうちに

「登録社員としてうちに派遣される雇用形態で期限は派遣と同じく3ヶ月、その後、再び登録出来るかの再検討をします。真面目に出来なければ登録取り消しとさせて戴きます。お給料は研修中の為と処罰対象として減給、しっかり下がります。これが詳細になります。読んで今すぐお返事を。こちらとしては不服で有れば断って戴いて問題はありません。登録を取り消しますので他に移って下さって構いません。」

 

日暮に手渡された書類を武藤はざっと目を通したと思われる。

 

贅沢を言える立場ではないし、少ないかもしれないが、会社員として会社の電話でこんな事をしておいて、お給料が出るだけ有り難いと思っているのだろう。直ぐに顔を上げて菅野に視線を向け、返事をした。

 

 

「これで、構いません!お願いします!真面目に頑張りますから……。」

 

「分かりました。それと…機会を設けますので新藤副社長の奥様に心からの謝罪を。迷惑料として詫びの気持ちを表して下さい。意味は分かりますね?たかが悪戯電話、そう思われての事でしょうが一週間も続けば悪質ですし、相手は妊婦です。赤ちゃんにもしもの事があった場合、あなたは一人の命を奪う結果になったのですよ。その責任をもっと重く受け止めて下さいね。これについては後日、顧問弁護士に書面を持たせます。不服であるならそちらも弁護士を雇って頂いて構いません、以上です。では、宇佐美さんに後はお任せします。」

 

「はい。確かに三か月間、お預かり致します。武藤さん、立てる?行きますよ。」

「……はい。申し訳ありませんでした。失礼致します。」

 

倫也の顔を見る事も出来ないまま、震えたままで武藤は社長室を後にした。

 

 

パタン、とドアが閉まる音がすると日暮が口を開く。

 

「倫也さん、顔、怖すぎ!声、怖すぎ!」

 

「当たり前だろう。思いが通じているなんで言われて優しい顔など出来るか。今後、外に出せない派遣の教育の押し付けは受けないからな!スケジュール管理など自分で出来る!!」

フン!!と応接セットの置かれている方向へ歩き、ソファへドサッと座った。

 

「そう怒るなよ。現場で学ぶのが手っ取り早いと思ったんだよ。武藤は前職の経験もあるし一般事務は一応クリアしてる。派遣先も比較的内容がハードじゃないところを選んで行かせたのに更新はされない。全く仕事が出来ない訳じゃないんだけどさ…今回理由が分かったよ。」

 

話しながら菅野がソファに移動して、倫也の前に座ると、日暮も倫也の横に腰を降ろした。「自己中か?自己完結か?傲慢か?我儘か?出来ますアピールか?」

倫也が言うと、呆れた顔で日暮が呆れ気味に訊き返す。

「…そこまでボンボン出て来るの?倫也がそんなに理由を出せるなら我慢してたんだねぇ。」

 

「そういう節が見て取れたって事だよ。絶対とは言わないけどな。」

投げやりに倫也が返す。

 

「ちっかい、かなぁ?武藤は自己愛が強い、仕事に於いての自己愛、自分が常に相手の上だ。素直に教えを吸収出来ない。なんで教えてもらわないといけないの?そういう感じだ。仕事を覚える気のない派遣程、要らないものはないからな。だから切られる。」

 

溜息交じりで菅野が二人の会話に入り、呆れた様に倫也が訊き返す。

 

「だから教育部署飛ばして俺に預けたんだな?」

 

「まぁまぁ。今回は野に放つより、という判断ですから目が届く分、倫子ちゃんには近付く事はないですよ。」

二人の会話を仲介しようと割って入った日暮だったが、二人は日暮の言葉などお構いなく、会話を続けて行く。

 

「副社長の仕事の教えを無視は出来ないからねぇ。何とかなればと思ったんだけどさぁ、お前が女性に興味なしで丁度いいと思ったし、まさか武藤が倫也に夢中にになるとはねぇ。」

 

「他人事だな。俺は妻に疑われて家出されたんだぞ!どんだけ心配して…生きた心地がしなかったわ!二度とごめんだからな。」

 

「だからお詫びにお休みあげたでしょ?予定日2週間前からのお休みも許可したし、産休扱いね?トータル1か月休みを許可したから、それで許して。」

 

「1か月?俺は3ヶ月の産休を希望したぞ!」

菅野が淡々と話す言葉を聞いて、倫也は腰を上げて前にいる菅野に顔を近付ける。

 

「男の産休に3ヶ月は無理!今は無理!奥さんが入院長引いて面倒見る子供がいるとかなら考えるけど、流石に3ヶ月は無理だろ?俺と日暮が過労死するわ。」

 

「チッ!」

と舌打ちをして、またドサッとソファに倫也は体を落とす。

 

「でも、あれだねぇ、倫子ちゃん、相変わらず面白い子だねぇ。一年振りかな?なんか綺麗になってるよね?女の子って18歳位から30歳までの間に変わるよねぇ。倫子ちゃんは遅咲きの花って感じかなぁ。まだまだ綺麗になるんだろうねぇ。既に人妻ってとこが勿体無いねぇ。」

 

「先輩、殴られたいですか?」

 

低い声で倫也に敬語で言われて、菅野は顔を顰める。

 

「褒めたのに…。」

 

「はい!打ち合わせしましょう!」

日暮の声で仕事の話を始めた。

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